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  • 【灘・京大医学部・鉄緑講師】勉強のインプットとアウトプット

    2025年7月1日

    勉強というものは、大きく2つの工程に分けることができます。それが「インプット」と「アウトプット」です。この区別は非常に基本的でありながら、意外と意識されていないことも多い重要なポイントです。

    インプットとは、教科書や参考書、授業などを通じて知識を頭に入れる作業を指します。たとえば、日本史の用語を暗記したり、英単語帳を読んで意味を覚えたり、数学の公式を頭に入れたりといった行為がインプットに該当します。一方、アウトプットとは、学んだ知識を実際に使ってみること、つまり問題を解いたり、自分の言葉で説明してみたりする活動を指します。英単語を使って英作文を書いてみたり、日本史の流れを記述でまとめてみたり、数学の演習問題に取り組んだりといった行為がアウトプットです。

    このインプットとアウトプットは、どちらが欠けても効果的な学習にはなりません。インプットばかりしていても、それを使う練習をしなければ、いざ試験で必要なときに思い出せなかったり、使いこなせなかったりします。逆に、アウトプットだけを繰り返していても、そもそもの知識が足りなければ解けるはずの問題も解けませんし、根本的な理解も深まりません。

    ただし、特に受験生、なかでも文系の受験生においては、どうしてもインプット偏重になりやすい傾向があります。これはおそらく、インプットのほうが心理的な負担が少なく、勉強している気になりやすいからだと思われます。教科書を読んだり、単語帳を眺めたりする作業は、ある意味「受け身」で進められるため、集中力が切れていてもある程度こなせてしまいます。実際、「今日は3時間も勉強した!」と満足していても、よく見るとその大半が参考書を読んでいただけだった、ということも珍しくありません。

    しかし、偏差値60から70へと一段上のステージを目指すのであれば、アウトプットの比重を明らかに高める必要があります。ここでいうアウトプットとは、ただ問題を解くという意味にとどまりません。たとえば、英語の長文読解であれば、内容を要約してみたり、自分で訳をつけて音読したりする。日本史であれば、年号の暗記にとどまらず、出来事同士の因果関係をまとめてみる。現代文であれば、設問の根拠を明確に説明できるように意識する。こういったアウトプットの積み重ねが、実際の入試本番で「点数として取れる力」につながっていくのです。

    また、アウトプットの重要性は、理解の定着という観点からも見逃せません。人間は、一度見聞きしただけの情報はすぐに忘れてしまいます。しかし、何度も繰り返し使った情報、特に自分の手を動かして問題を解いたり、説明を書いたりする中で活用した知識は、記憶に長く残ります。たとえば、英単語をただ見て覚えるのではなく、実際にそれを使って例文を作ってみる。この「使う」過程こそが、知識を“使える力”へと変えるための鍵なのです。

    さらに、アウトプットには「自分の理解の穴を可視化する」という利点もあります。問題を解いてみると、「なんとなく理解していたつもりだったけど、全然手が動かなかった」「選択肢の区別がつかない」「時間がかかりすぎる」といった具体的な課題が見えてきます。このように、自分では気づけなかった弱点を明らかにしてくれるのがアウトプットの強みです。

    つまり、勉強時間をいかにアウトプット中心に再構成できるかが、受験勉強の質を左右します。もちろん、最初の段階ではインプットが不可欠です。ゼロの状態で問題を解こうとしても何もできません。しかし、一定の知識が入った段階からは、積極的にアウトプットの時間を増やしていくべきです。そして、問題を解いたら解きっぱなしにせず、必ず見直しをして「なぜ間違えたのか」「どうすれば次は解けるか」といった振り返りまで行うことが重要です。そこまで含めて初めて、アウトプットの効果が最大限に発揮されます。

    受験において結果を出すためには、「ただ勉強時間を確保する」だけでは足りません。その時間の中で、どれだけアウトプットの比重を高め、自分の弱点を洗い出し、解決していけるか。それが偏差値を10上げるための本質的な取り組みであり、地道だけれど確実な道なのです。